日本学術会議から各協力学会への依頼に応じて、本学会から、日本学術会議のあり方についての意見を出しました


日本学術会議のあり方についての意見(研究・イノベーション学会より)

<問1:日本学術会議がよりよくその役割を果たしていくために、その活動、運営に関連して、検討すべき点、そのために必要な方策>

学術会議の役割に対する当学会からの視点
中間報告では日本学術会議の役割の整理がなされていたが、現代の文脈そして未来においても中核となり続けるものなのか、日本学術会議の外部のステークホルダーも交えて議論を行い、再確認すべきである。このプロセスは、日本学術会議の設立の経緯を踏まえ、学術振興に対して公衆・市民(以下、「公衆」という)からの負託を受けた存在であることを再認識する機会ともなろう。

1. 科学的助言機能の強化

政策への提言を日本学術会議の役割の一つとするならば、日本学術会議、そして、その提言の受け手それぞれに求めるべきことがある。
日本学術会議は、自民党PT提言でも指摘された「政策のための科学」を強く堅持し、科学を根底とするべきである。それは様々な政策課題に科学的見地から見解を示すものであり、政府に対して「シンクタンク」として機能することと必ずしも同一では無い。また、この役割を担うには、科学者に対して「政策のための科学」に係るスキルを養成し、政策形成における科学的知見の役割や行動規範についての理解も含む政策リテラシーを高めていくことが必要である。立法府や政策形成の場で一定の経験を積むフェローシップ制度、インターンシップ制度などの導入が一考に値する。同時に、部会や委員会の壁に縛られること無く横断的に政策課題を先読みし、当該課題についての議論に寄与できる科学者に附帯する情報、いわゆるメタ情報を集約しておくことにより、課題が顕著化した際に適時発出することが可能になる。
同時に、提言の受け手である公衆、それの負託をうけた立法府、また、政策を運用する行政に対して、科学に対して安易な期待を持つのではなく、科学的な助言を活かすことができるスキルの必要性を説くべきである。とくに、ステークホルダーからは、短期的な視点で、与えられた課題に対して一つの解を求められがちではあるが、科学的な根拠に基づく助言が必ずしも一つの見解に集約されるものでは無いことへの理解を求めるべきである。その理解を増進するため、例えば、立法府、行政との関係では対話と相互学習の機会を継続的に設けることが望ましい。

2. 対話を通じた情報発信力の強化

対話には異分野の科学者同士、そして、ステークホルダーとの対話が含まれる。
異分野の科学者同士の対話については、機能別委員会や若手アカデミーが示すように、一定の役割が果たされていると認識しており、今後も継続されることが望まれる。
ステークホルダーとの対話については、ただのアウトリーチにとどまらず、公衆、立法府、行政府と対話を通じた情報発信を行うことに強く賛同する。このような対話には上記の立法府、行政府との相互学習の機会が含まれると考える。ただし、継続的に行うことが重要であり、一度限りのイベントを専ら強化することは避けるべきである。
なお、当学会はその活動の目的としてこのようなステークホルダーとの対話を進めてきており、テストベットの一つとなり得ると確信する。日本学術会議と連携を実装する仕組みに期待する。

3. 会員選考プロセスの透明性の向上

上記のような役割を強化するためには、それなりのエフォートの投入が不可欠である。これまでの会員のボランタリーな貢献に敬意を表しつつも、これに頼ったままであることは持続可能性を担保することが困難と考える。そこで、会員選考プロセスでは、日本学術会議の機能を遂行するためのエフォート面でのコミットメントが可能な人材を一定数対象とするべきではないか。学術活動、教育活動に活躍する科学者は、既に多数の活動にコミットをしており、機動的な活動が困難な者も少なくない状況を踏まえ、たとえば、サバティカルの取得が可能な研究者などを選択肢にすることを提唱する。また、後述の事務局機能の強化と合わせ考え、事務局の専門人材との協調を前提とした推進体制とすべきである。

4. 国際活動の強化

日本学術会議は日本の科学者の代表機関として国際活動を行っていると認識する。世界的に科学への不信が広がりを見せる中、アカデミアの国際連携はこれまで以上に必須なものとなる。国際的な議論に貢献することはもとより、その国際活動をアカデミア、産業界、公衆、立法府、行政府へ発信していくことが重要である。広報活動の強化はこの点に注力すべきである。

5. 事務局機能の強化

事務局機能の強化には、固有の人材の雇用が欠かせない。この固有の人材とは、単なる事務業務を担う人材ではなく、学術コミュニティと社会をつなぐ役割を担う専門人材(例えば、大学リサーチアドミニストレーターのような人材)を指す。また、公衆、産業界、立法府、行政府それぞれとの対話のチャネルを確立するためにも、固有の事務局人材には、これらの各セクターの出身者を含むことが重要である。

<問2:役割を果たすのにふさわしい日本学術会議の設置の形態やあり方>

あり方についても再確認が必要と考える。
国内法で定められる既存の法人格は役割の発揮の制約になりかねない。公衆からの負託に答えるための組織形態、すなわち、海外のアカデミーと同等の法人制度がないことが課題ではないか。
財政面については社会との接点を保つ観点で、公衆・産業界からの資金を募ることは必要ではある。例えば、公衆からの資金を募り、対話のための基金とすることも選択肢となろう。しかし、諸外国の事例を鑑みても、これで運営の費用を賄うことは困難であると想定される。また、シンクタンク機能を業務と位置づけ、立法府・行政府からの資金獲得を通じた組織の維持も選択肢ではあるが、そのためのさらなる専門的なスキルを持つ人員の拡大が必要になり、かえって日本学術会議の本質的な役割の発揮を制約することになりかねない。このことは、民間のシンクタンクの財務状況が必ずしも潤沢で無いことからも明白である。公衆からの負託を基礎とし、最低でも現状と同様の公的支出を原則とすべきである。同時に、公衆からの負託を受けていることを日本学術会議として強く意識し、公共との対話を重視し、信任の獲得に向け行動していくべきである。

<問3:ガバナンスのあり方>

研究・イノベーション学会は産官学からの会員が集い、科学・技術政策、研究開発マネジメントの研究を射程の一つとして35年に渡って活動を行ってきた。本回答のため、理事のうちそれぞれのセクターの若手・中堅・シニアが集い、集中的な討議を行った。ただし、期間の制約から全学会員に開いた議論を行うことができなかった。当学会では引き続き議論を行っていく。当回答が学会としての総意に基づくものではないことに留意いただきたい。

⬛︎日本学術会議のガバナンスのあり方
日本学術会議のガバナンスに対する公衆からの懸念があるとすれば、これに向き合う必要がある。少なくとも全体の意思決定機関へのステークホルダーたる第三者の関与が必要である。また、意思決定機関に対する監査機能を設けることも必要ではないか。例えば、将来の科学の担い手である若手アカデミーに、今日の意思決定に対してアセスメントを行う機能を付与することがガバナンス機能の強化に繋がると考える。

Post Navigation