会長挨拶(2017年度会長 宮崎久美子)


 

会長挨拶

研究・イノベーション学会会長(2017年度)
宮崎 久美子
(東京工業大学環境・社会理工学院イノベーション科学系教授)

本学会は1985年10月に研究・技術計画学会として設立されました。長い間、技術経営(企業の研究開発マネジメント)と科学技術政策を二つの重点分野としていましたが、時代の変化とともに、学会の活動領域も変化、多様化して行き、学会の活動内容について再検討した上で、2015年の10月に学会名を研究・イノベーション学会に変更しました。

ビッグデータやAI(人工知能)、ロボットは様々な分野に影響を与える技術であり、新興技術特有の進化パターンを有しており、社会経済面でも大きなインパクトを与えると思われます。なお、ナノテクノロジーのような新興技術はその技術だけでは役に立たず、他の応用技術などと融合することによって始めて役に立つだけではなく、社会に浸透していきます。近年において製品ライフサイクルは短縮化しており、その一方で製品を構成する技術群は多様化しており、パラダイムシフトや異なる分野のコンバージェンス(収斂)も起きており、技術経営は極めて重要な課題となっています。

日本の競争力を維持、強化させていくためには、イノベーションがあらゆる場で起きる社会を目指す必要があります。個人、企業の開発現場、研究機関、産学連携等による共同研究の場、政府、自治体、あるいは生産性を上げることを検討している農家など、ミクロからマクロの場でイノベーションを創出することを促す必要があります。イノベーションをどのように創出するのか、それをどのように社会・経済的価値に結び付け、人々を豊かにするのか、という問題は容易に解決することはできません。それには産、官、学の間の共同作業、連携、ビジョンの共有化が必要となります。

本学会は産、官、学の会員がそれぞれ3分の1ずつ、約1000名の学会員からなっています。9つある分科会の活動では、イノベーションが大きく取り上げられています。2年前に、本学会を、会員にとってより魅力的にするために学会員が必要と考えていることを把握するためにアンケート調査が行われました。理想の姿として、企業からは、有益な情報収集や交流の場として学会を利用、事例や分析から得られる気づきの効果を期待する事などのコメントがありました。官庁からは有益や情報収集や他の省庁との意見交換の場として学会を利用する点、大学教員からは産、官と交流、意見交換する中で知見を広げ、それらの情報を研究にも生かして行き、研究成果を生み出して行くことがあげられました。本学会はそのような会員からのコメントをもとに、組織・制度改革を進めております。

具体的には、会長、副会長や理事、その他の会員約20名からなる新たな活動検討委員会において、今後の活動について毎月活発な意見交換を行い、検討を進めています。時代の変化に対応しながら5年後、10年後の将来について考え、学会を進化させていく努力を重ねています。昨年度はイノベーション人材について検討し、ワークショップを2回開催しました。今後取り組むべき課題として、情報発信の強化、国際化、学会誌の充実、会員数の増加、他の学会とのつながりを強化することが挙げられます。

イノベーションは不確実性を伴い、リスクが生じますが多面的な視野に基づいて、考え、情報収集をし、分析をし、戦略を練ることが可能となります。その上、立てた戦略に基づいて実行し、当初の目標と照らし合わせて評価し、戦略を練り直すことが考えられます。技術経営とは理論と実践の挟間に存在する学問です。従って理論について学ばなければ、適切なアクションプランは作ることは困難であります。理論と実践は相互に関連し合って、相互作用を起こしながら、前進して行くと考えられます。今後更なる研究の成果が期待される領域です。今後の30年に向けて、さらに先端的役割を果たして行くために、皆さまと力を合わせて進んで参りたいと思います。

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